エッセイ『鳩の激突』

『鳩の激突』

百一里優・著

何を急いでいたのかは分からない。

気配がして、ふと振り向くと、私の頭上のさほど高くないところを、後ろから、一羽の鳩がすごい勢いで飛び過ぎていった。
大学の構内を学食に向う途中、農学部前のT字路に差し掛かったところだった。

違和感を覚えた。
鳩がまっすぐ突き進んでいくそのすぐ先には十階以上もある建物があったからだ。
まるでその建物が存在していないかのように鳩は一直線に飛んでいく。
1、2秒後に鳩は、二階の、少し張り出した大きなガラス窓にまともに突っ込んだ。 Continue reading “エッセイ『鳩の激突』”