小説『森の図書室、カザルスの夜』

第一弾として『森の図書室、カザルスの夜』(リンク)の1~5章を掲載します。

——20世紀最後の夏、私は彼女とたった一夜の恋に落ちた。
森の麓の寂れた公民館。図書室の不思議な少女。バツイチ彼女の半生と腕につけられたストライプ状の火傷の痕。カザルスのチェロで舞う、彼女との悦楽のダンス!

表示形式を選びたい方は上のリンクから中・長編小説のページにどうぞ
森の図書室、カザルスの夜

古い気象データを手に入れるため東北の森林研究所を訪れた30代半ばの独身研究者の太田貴文。運の悪い彼は森の中で終バスに乗り遅れてしまう。幸い、研究所に出入りしている森野木乃香(きのか)という笑顔の素敵な女性に拾われるが、森の麓の寂れた公民館に独り泊まる羽目になる。臆病な貴文は怖いと思うが、さすがに口にはできない。ところが図書室で不思議な少女と仲良くなると、居心地のよさを感じ始める。一方、夕飯を持って戻ってきた木乃香はどこか落ち込んだ様子で、聞けば、誕生日の夜を独りで過ごすらしい。
貴文の誕生祝いの演出でふたりは打ち解け、食後の酒を飲みながら、木乃香は自分の過去を語り始める。貴文が戸惑うほどあけすけな恋愛の話は、やがて夫の異常な執着、家庭内暴力へと転じていく。すべてを聞いてもらい、新しい一歩を踏み出す元気をもらったという木乃香は、BGMに流していたカザルスのチェロでお礼のダンスを貴文に贈る。
貴文のお気に入りの曲がかかると「特別な夜よ」と木乃香は囁き、踊りに誘う。踊れないはずの貴文の身体はなぜだか動き、踊りに没頭していく。
そして、ふたりは結ばれるのだが……。

ちょっと疲れた大人のためのフェアリーテイル。

『ハルの森』(後日公開予定)の前日譚。

表示アプリBiB/iの使い方

【表示アプリの使い方】
BiB/iというアプリを使っています。

  • スマホでは別ウィンドウに移動します(指定のウィンドウの場合)。
  • PCではブラウザーの〝戻る〟動作でこのページに戻ってください。
  • 右上の「歯車」アイコンでレイアウトやページの移動、「TT」アイコンで文字サイズの変更ができます。
  • 左上の「三本線」アイコンで目次を表示できます(表示がおかしい場合、このボタンで解消することがあります)。アイコンをもう一度クリックすると、変更用表示が消えます。

エッセイ『鳩の激突』

『鳩の激突』

百一里優・著

何を急いでいたのかは分からない。

気配がして、ふと振り向くと、私の頭上のさほど高くないところを、後ろから、一羽の鳩がすごい勢いで飛び過ぎていった。
大学の構内を学食に向う途中、農学部前のT字路に差し掛かったところだった。

違和感を覚えた。
鳩がまっすぐ突き進んでいくそのすぐ先には十階以上もある建物があったからだ。
まるでその建物が存在していないかのように鳩は一直線に飛んでいく。
1、2秒後に鳩は、二階の、少し張り出した大きなガラス窓にまともに突っ込んだ。 Continue reading “エッセイ『鳩の激突』”